2011



4月東京郊外

3月11日。東日本大震災が発生。
東京在中の私ですら、ついに関東大震災が来たかと思う程の強烈な揺れだった。
東北地方では強震に大津波、原発事故と、この世の地獄を体験された方も多く、被害に遭われた方々に
1日も早く平穏な日が訪れるよう心よりお祈りいたします。

余震が続く4月初旬。一斉調査に参加する。
武蔵野は地震の影響は少なかったようだが、万一があると帰路の交通網が気になる・・。今年は5月に第3子が産まれる予定で臨月の妊婦を置いての外出は気になってしょうがない。第1子の時は出産の10日前に九州でベッコウ探しをしていても平気だったけど・・。おまけに出産の3日前に飲んで喧嘩して、赤ちゃんを抱いてる写真は青タン面である。まぁそれはともかく、今年は地震の恐怖が焼きついて家族と離れると不安だった。


多数の卵嚢があった産卵環境。湿地脇の浅く緩い流れの泥中。
藪の中を流れ、緩い流れがあり、林床からも近い。

露出したままの卵嚢 成体♂と卵嚢 
サンショウウオの産卵は実に不思議だ。広い湿地内で卵嚢が集中する場所もあれば、2対ぐらいがスポット的に点在する場所もある。集中する場所は、それなりに水位があったりと条件が良いのだろうが、点在する卵嚢は何だろう?♀が耐え切れず産卵した訳では無い。なぜなら受精している。そこで孵化した個体が成体となり産卵するのだろうか?しかし一時的な水溜りにも見える。人の目から見れば、もっといい場所がいっぱいあるのに何でこんなとこ?という感覚だ。広い湿地内で♀を呼ぶサインがあるはずだが、多くの個体が集まる場所でなく、小場所で♂♀4−5匹で産卵する個体の繁殖戦略って何だろう?

6月 長野

千曲川の雄雄しい流れ
毎年GWに観察に出かけるのが楽しみだが、今年は出産の為、5月の外出、特に泊りがけは禁止された。長男は5月3日、三男は5月7日と狙ってないのに何故に5月に産まれるかね?7日はGWから外れるのでセーフだが、もし4月30日とかであれば子供の誕生日は在宅がルールなのでGWの泊り観察は厳しくなるとこだった。今年の6月は運動会、授業参観、法事、お宮参り、その他で空いている休みが1日しか無い。用事の無い1日だけは俺にくれという事で、奥多摩か長野で悩んだけど、多くの個体が観察できる長野へ向かった。

生息地の源流 産卵場所と思われる湧水口
昨年より少し遅い時期に行ったので、予想としては陸上には少なく、水中に繁殖形態となった成体が見つかるだろうと考えていた。実際に観察した結果は、だいたい予想通りの結果ではあったが、水中で見つかった個体に繁殖期の特徴が出ていない。繁殖場所は上画像左の枝沢に流れ込む斜面からの湧水で約5m程の伏流水状の小沢となっている。その小沢と枝沢との合流部分に終令幼生が多数、上部にはまだ小さい幼生が多数見られる。小沢の伏流水中に成体が10数匹確認出来たが繁殖形態ではない。今年は繁殖に参加しない個体なのか?小沢に棲みついてるだけの個体なんだろうか?割と若い個体が多かったのだが、まだ繁殖に参加しないのかなぁ。爪も無い。枝沢の陸部分で見つけた♂成体も後肢が肥大してないし爪も無い。時期的に繁殖形態の出てる個体が見つかってもいいはずだが全く見つけられなかった。産卵場所の地下水に入る前には特徴が出てるはずだが、まだ移動してきてないのか?来年また確認してみたい。
(追記)
爪や後肢の肥大が見られなかった6個体を持ち帰り、ハコネ専門家のY氏に卵巣や精巣を解剖検査して頂いた。
(結果)
♀個体は4匹。小さめの2個体は♂だった。
2♀(6.8gと6.3g)の卵巣には未熟卵が多数見つかったが当年産卵は難しい状態。
1♀(5.2g)亜成体のようで、卵巣内に固まりだした卵が数個
1♀(5.9g)卵巣内に卵無し。
結果を頂いて私が思うところは、ハコネには晩秋産卵の個体が知られているし、3年に1度しか繁殖に参加しない個体も知られている・・卵の育成に十分な時間が取れなければ繁殖はしないのだろう。しかし(5.9g)の卵無しの♀個体は何だろう?爪が無かった訳だが、飼育下で爪のある個体を水中で20℃飼育していると一ヶ月半程爪が残ってる。と言う事は5月初旬にはこの豪雪地帯でも産卵は行われているという事なのか?6月下旬で繁殖形態の個体が見つけられないのは私の見つける技術が低い訳で無くて、産卵が終わっているからなのか?桧枝岐なんかでは7月でも繁殖形態の個体は見つかるし、まさかそんなに早く終了してないだろうなぁ・・ハコネはよく分からん(笑)。とりあえず繁殖しない個体も繁殖場所近くで潜んでいる事と変態サイズの倍以上に成長していても性成熟している訳では無いって事は分かった。

終令幼生 上陸間もない幼体
個体数の多い場所では日中でも石をどかす事無く、幼生が見える。
まさに無数に棲息しているのだろう。成体の産卵数は年に数個なのにね。
素晴らしい繁殖戦略だ。

繁殖期の特徴が出てないハコネ成体 タゴガエルの卵塊

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